イセ文化基金は「伊勢の卵」で有名なイセ食品株式会社グループの内、アメリカに拠点を置くイセアメリカ、シーボードフーズ、シーボードファーム三社の寄付金により1983年設立された文化基金財団です。翌1984年には非営利文化財団としてアメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)から承認を受けています。
イセ文化基金の活動要旨
イセ文化基金は、国際的文化交流支援を目的とした様々な展覧会を開催し、日本を初めとしたアジア諸国のアーティストをアメリカ合衆国に紹介しています。
また2002年から新進キュレーター支援のためのプログラム「PEC(Program for Emerging Curators)」を開始。13年間に渡り、世界各国の若いキュレーターに活躍の場を提供しました。
そして新進アーティストの支援として「美術学生展覧会」、「ISE NY Art Search」の二つの展覧会も行っているのです。
イセ文化財団
イセ文化財団とは美術・音楽・舞台芸術などを中心とした文化芸術分野における助成や表彰を行うことを目的に発足した財団で、文化芸術分野の振興を目的としています。このためイセ文化財団の活動においては、様々な工芸や美術などをテーマにした展覧会が開催されていて、屛風の名作を特集したり中国磁器を展示したりと様々な切り口で展開しています。これらはイセコレクションとも呼ばれていて、イセ食品の代表である伊勢彦信が発足したものです。実際に本社のある富山市には事務所の他に美術館も併設されていた、様々な展示会にも協賛してきています。
もともと同氏は日本を代表するアートコレクターとして知られていて、日本が・洋画・陶磁器などを幅広く所有してきました。特に中国磁器のコレクション分野では有名で、世界各地の展覧会でも出品を打診されているほどその分野では活躍しているのです。これらの活動からさらにイセ文化基金による活動が行われ、イセグループのうちアメリカにある3社の寄付金によって創設されるなどその広がっていくこととなったのです。そして翌年にはアメリカ合衆国国税局によって文化財団として認められるなど、その功績は非常に高いと言えます。
グローバルの時代を見据えて美術・芸術分野でも国や地域を超えた活動を支援しようとする取り組みを見越したもので、文化的な相互関係を高めることにも資するとされてきました。ただ、これらのイセ文化財団の活動が事業本体であるイセ食品の財務状況を悪化させてしまった要因にもなってしまっていることは残念な事実でもあります。現在会社更生法によって財務整理が行われていますが、集めた美術品の数々もグループ子会社である「シンワオークション」を通じて出品されるケースも出てきています。
イセコレクションであるラウル・デュフィ/マリー・ローランサン/ベルナール・ビュッフェなどが出品され、その競売で得られた資金は会社更生法による運転資金や財務改善のために利用されることとされているのです。エッグ・キングと呼ばれた伊勢彦信でしたが、事業が拡大することに因って生じた債権者との溝が埋められなかった点は、経営者としてのバランスが不十分だったゆえんともいえるでしょう。
一方でアート面では日本でもたぐいまれなる貢献をしてきたこともあるという側面もあるので、今回の会社更生法を通じて経営が軌道に乗ればまだまだイセ文化財団は文化・芸術の振興の余地はあるものと推察されます。